二人の巨匠とワイドショー

実社会と演劇
芸術家は実社会との関わりが薄いように思われているし、事実そういう人が多いと思う。しかし、こと演劇に関して言えばそれは正反対となる。実社会との関わりが無くして演劇は成立しない。実社会に生きているお客さまに見てもらうことで完結するのが演劇であるからだ。
宇野重吉と米倉斉加年には共通点が多々あるが、一つ面白い共通点がある。それは午後の時間帯のワイドショーでの定番である三面記事を好んでいたことである。ゴシップが好きであった。宇野先生に至っては週刊誌もよく読んでいた。米倉斉加年はとにかくテレビを付けていた。二人は何を見ていたのだろう。
二人は一緒にテレビを見ることもあった。他の人間からすれば何とも息苦しい限りであるが、二人は仲良くテレビを見た。狭いビジネスホテルの部屋でテレビを見た。芝居の話しもしたに違いないが、ほとんどは黙ってテレビを見ていたに違いない。
宇野先生はこんなことも言っていた。遊びは一人では駄目だ、将棋でも何でも良いから一人での遊びは役者は駄目だと言っていた。それで二人でテレビを見ていたわけでは無かろうが、二人は有識者や芸術家は見ないようなくだらないワイドショーをそろって見ていた。それも皆が仕事をしているときに見ていた。
但し、ワイドショーでは決して流すことのない、時事について、稽古の時によく話した。二人の演出の時は、時事についての勉強も欠かせなかった。
演劇は社会に疎いと上手くいかないのである。現実逃避の演劇ばかりではあるが、現実と向き合った演劇の方が面白い。